Nakanishi Keikou

中西 景皇

淹茶道 / 株式会社ジェー・ピー 二代目宗師 宗家家元 / 代表取締役社長 http://enchado.jp/

略歴

早稲田大学教育学部卒業。英国St.Andrews大学留学。淹茶道初代宗師 長谷川景光に師事。平成31年3月20日、二代目宗師 宗家家元を襲位。茶道家として活動の傍ら、大学卒業後は東宝ミュージック株式会社入社。エンターテイメントプロデューサーとして数々の舞台俳優のライヴ、舞台、音楽をプロデュース。現在、文化発展企業 株式会社ジェー・ピー代表取締役社長としても活躍。

現在の仕事についた経緯

エンターテイメント業界に身を置きながら、茶道家としての活動を続けていた先に様々なご縁が重なって、現在の淹茶道(えんちゃどう)2代目家元を襲名いたしました。淹茶道は平安時代の茶道で、雅楽奏者・研究者として著名な長谷川景光が中心になって、創立した茶道の流派です。現在、東京から熱海に教場を映し、山と海の風を感じられる場所で淹茶道の茶道・香道体験を提供しております。

淹茶道の魅力は、利休以降の侘び寂の抹茶道とは趣が異なり、宮中で嗜まれた雅なお茶の文化ではないでしょうか。嵯峨天皇、空海、最澄の三偉人を流祖とし、私どもは平安時代の装束、道具、設えを『茶経』から遡り『類聚雑要抄』などの文献を紐解いて実践することで、淹茶道の作法を体系化しています。この作業が文化継承そのものであり、私自身が家元になった理由に通じます。
淹茶道はまだ明らかにされていない部分が多く、研究を続けなければ、道は途絶えてしまいます。この役目を担いながら、この文化を多くの方に知っていただき、後世に残すために尽力したいと考えております。

仕事へのこだわり

英国留学がきっかけとなり、日本文化への興味を新たにして茶道の世界に入りました。社会に出てからは、音楽ライヴや舞台プロデューサーとして国内外で公演を取り仕切る立場で多忙を極めていましたが、東日本大震災の際に、日本人や日本文化を見つめなおす機会となり、次代に日本人の和の心を繋いでいくために、自ら体現し広めていく立場を担う決意を固めました。

このような思いに至るまでには、2つの大切なご縁がありました。一つは先にもご紹介した淹茶道 初代家元の長谷川氏で、もう一つが日本舞踊の名古屋西川流の三世家元の西川右近氏です。
長谷川氏は平安文化研究の第一人者として、本物にこだわることを重視されていました。1200年前の道具や茶碗等を収集され、研究会でも積極的に現物に触れさせていただきました。また西川氏は日本舞踊の大家でありながら、飾らないお人柄で自ら先頭に立って動く姿を見せてくださいました。

2つのご縁を通して私の人生が変わったように、新しいご縁を紡いでいき、関わった皆様が幸せになる道筋を作ることを大事にしていきたいと常々考えています。なぜならば、仕事においても、淹茶道においても、人が中心であり、人がいないと始まらないからです。

若者へのメッセージ

若手のうちは失敗を恐れずに何にでも挑戦してみてほしいと思います。チャレンジした先にご縁が紡がれ、良い30代・40代が待っているはずです。
個人的には、コロナ禍に入ってから仕事と生活の拠点を東京から熱海に移しました。東京を離れることは、周囲からの反対が無かったわけではありません。それまで一緒に活動していた同門の仲間とも物理的な距離が出来ることや、今後淹茶道を知っていただきご参加いただくにも、東京の方がいいのではないか、そんな声もありました。
しかし、平安装束を身に纏い、ゆったりとした時の流れの中で、季節を感じながらお茶を味わい、薫物を聞く・・・まるで平安時代にタイムスリップしたかのような場所を作るという気概で、自ら土地を探し、設計にも携わり、新たな教場を熱海に作りました。
初代家元の長谷川氏から「鶏口牛後となるなかれ」という言葉をもらい背中を押されて2代目を継承した時から、挑戦の連続です。当面の目標は、平安文化に興味を持っていただき、その延長線上に淹茶道があることです。皆様の日常の一部としてお茶やお香でリラックスしていただいて、文化が定着していくことを願っています。