弊社は1915年に創業され、代々染色工場を営んできました。
私はもともとコンピュータのプリント基板を製造するメーカーにて約3年勤めていましたが、26歳で家業に入り、1996年に4代目の代表に就任した次第です。
今振り返ると、幼少期から両親が染色業に取り組んでいる様子を間近で見ていて、「いつかは自分もこの仕事をするんだ」ということを必然の運命として感じていたように思います。

現在の仕事についた経緯
仕事へのこだわり
弊社は創業当初より伝統文化である京黒紋付染めを行っております。
例えば力士の優勝パレードや、歌舞伎役者の襲名披露、天皇陛下による叙勲の授与式など、日本の正式な場における第一礼装はすべて黒紋付というのが本来のマナーです。
しかし生活習慣の変化から着物の着用が縁遠いものになると、黒紋付のマーケットも著しく縮小してしまいました。
その上で私が抱いた思いは、100年以上も黒だけを染め続けてきたこの技術は頑なに守りながらも、伝統技術を世から必要とされる形へ変化させていかなければ、伝統産業の発展的は継承は成し得ないというものでした。
そこで、私達の世界トップレベルとも言える黒の美しさを広く活用できるよう、現在はISSEY MIYAKEやヴィヴィアンウェストウッド、ジルサンダーといった名だたるアパレルブランド様と数々のコラボを行い、技術の発展と継承に努めています。
経営者としては、父の定めた「京都紋付の精神は、すべての人々は仲間であり、すべての人々の人格を尊重し、和を持って尊しとする」というモットーに則り、事業を通じて幸福を実現し、社会に貢献することに重きを置いて日々邁進しています。
今後の目標
既存の黒染めのみのマーケットから、アパレルブランドとの提携に舵を切り、現在特に注力しているのがお客様の古着を黒で染め変えて再生するアップサイクルサービスです。
こちらは弊社のHPからも簡単にお申込みができますが、あえてパートナー契約を結んだアパレル企業様のHPに入口を設け、成果報酬型のシステムを採用することで、弊社は同サービスの普及、パートナー企業様は廃棄衣類の削減をしながらSDGsを達成し、ひいては利益を得られるというスキームになっています。
今ではフェリシモ様や伊勢丹様、アーバンリサーチ様、セカンドストリート様など多くの企業様とパートナー契約を結ばせて頂いており、同サービスを開始してからの初年度の業績は前年比の3倍、以降、四半期ごとに順調に伸びている次第です。
また、同スキームは国内外を含めて3つのアワードを受賞致しました。
古着の黒染めをしていて気づいたのは、黒染めする前より、黒染めした後の方が各段に格好よくなる服がたくさんあるということです。
そこで、はじめから黒染めによるデザインの変化を想定した服があれば面白いのではないかと、現在は「染め替えをデザインする服」の実現化に取り組んでいます。
お客様には、購入した際の色・風合いと、黒染めした後の変化を2wayで楽しんで頂ける他、廃棄衣類の減少に寄与し、販売店様においてはお客様に染め替えを提案できるなど、1着の服に多くの付加価値が設けられるはずです。
まずは日本からこのビジネスモデルを広げ、ゆくゆくは海外にも進出したいと考えています。
若者へのメッセージ
仕事に関しては「楽しい」と感じている人と、そうは感じていな人と、さまざまな人がいると思いますが、この世に天職と言えるような仕事はほとんどありません。したがって、いかに自分の今の仕事を天職にしていくかという姿勢が大切なのではないかと思います。
楽しむ姿勢からさまざまなビジネスアイディアは生まれますし、大きな成功を収めることが難しくとも、自分の設定した目標を1つ1つ達成すれば、まずはそこで喜びが得られるはずです。
仕事上で得られるそのようなささやかな喜びや体験が人間をどんどんと育て、いわば仕事のできる人間になっていくのだと思います。