Fujito Atsuo

藤戸 淳夫

GutHacks / 藤戸薬局 代表 https://guthacks.net/

略歴

鈴鹿医療科学大学薬学部卒業。新卒でJCHO四日市羽津医療センターに入社し、医師、看護師をはじめ多職種と連携しながら病棟業務を中心に5年間経験。より専門性を高めるために、老年薬学認定薬剤師、骨粗鬆症マネージャーを取得。両親が還暦を迎えることを機に、家業である藤戸薬局へ入社。2020年、母校の大学院薬学研究科へ進学、同時に四日市医師会看護専門学校非常勤講師へ着任。日本における薬に頼りきった医療に限界を感じ、2022年に腸から始める本質の健康投資GutHacksを立ち上げ、オンラインで講座やコンサルティングを中心に一人一人の健康サポートに邁進。学会や研究会、研修会などでの講演多数。

現在の仕事についた経緯

病院、薬局で働く中で、さまざまな命の終わり方に関わり、救うことのできる命と救うことのできない命を目の当たりにしました。そして、救うことのできる命の多くは、いわゆる生活習慣病がベースに潜んでいることがほとんどであり、日常の生活で改善できることばかりであると気づきました。
日本の医療は、西洋医学の文化がほとんどで、治療に対する技術は非常に長けている一方で、薬に頼らない健康法や健康予防に関する分野はまだまだ医療者のみならず国民の意識に根付いていないことを痛感しました。
薬局で働く中でも、患者さん側のゴールは病気を治すことではなく、薬をもらうことになっている現状に無力感を感じ、一人でも多くの方に健康予防の大切さを知って欲しい、本質の健康法を知って欲しい、悲しい想いをして欲しくないという想いを胸に、医療現場を飛び出し、SNSやオンラインでの発信を開始。オンライン講座やコンサルティングを事業化することを決意しました。

仕事へのこだわり

「薬あるところに薬剤師あり」の精神で新人時代から働いてきました。皆さまは、薬剤師に対してどんな印象を持たれていますか?一般の方へ向けて薬剤師のイメージについて質問した研究によると、「薬剤師は医師と同様に理知的なイメージがある一方で、看護師のように人と接しているイメージがなく、薬をただ作っているだけ」と思われてしまっている結果でした。未だなお、その印象は拭いきれていないのが現状です。
これまでの薬剤師は、対物業務が中心で、一人一人の患者さんへの対人業務が疎かになっていました。薬学教育が4年制から6年制へ移行し、私自身6年制卒の薬剤師として、そのような背景を払拭したいという想いや、冒頭の「薬あるところに薬剤師あり」という想いを、新人時代から胸に秘め日々の仕事に関わってきました。
近年では、薬剤師が主人公のアニメやドラマが放送され、脚光を浴びています。医師、看護師と同様に、薬剤師も入院病棟や手術室、救急外来、集中処置室、在宅医療など幅広い現場で活躍するようになり、対物から対人へのタスクシフトがトレンドとなっています。
大学卒業後に就職した病院では、担当する入院病棟のみならず、救急外来や透析室、内視鏡室などへ積極的に足を運び、患者さんの困りごとはないか模索したり、他の医療職との連携を深め、より質の高い医療サービスに貢献してきました。急変対応時には呼ばれずとも駆けつけ、意識・呼吸の確認をし、他のスタッフを呼びながら心臓マッサージを開始し、一命を取り留めた一幕は私の自信につながっています。
「これまでの薬剤師像をぶち壊していく」という意気込みで積極的に関わってきた結果、「あの男性薬剤師さんにもう一度逢いたい」「藤戸さんがいたからあの患者さんは救えたよね」と患者さんからも、他の医療職種からも信頼を得ることができました。
薬剤師といえど、一人の医療者であり、できることは何でもやる。現在、私は医療現場に限らず、生活者のより近い場所に携わることで、より綿密な健康サポートをするための事業を始めました。
これからも人とのつながりを大切にし、「薬あるところに薬剤師あり」の想いをもって一人一人の健康に貢献していきます。

若者へのメッセージ

これから健康に関わる仕事へ就かれる方へお伝えしたいことがあります。インターネットが普及した現代では、さまざまな情報が飛び交います。そのなかでも、健康にまつわる情報は、私たち医療者の知らないところで出回り、日常の生活の中でひそかに浸透していきます。
良い情報もある一方で、科学的根拠がありそうだけどでっち上げられた情報やデマ情報も非常に多く出回っています。コロナ禍に入ったばかりの状況を思い返してみてください。「ワクチンの中にはマイクロチップだ」「コロナは存在しない」「マスクはオムツだ」など訳の分からない情報が錯綜し、混乱している状況下をさらにかき回すような事態が起こっていましたよね。
科学に精通していない方からすると、いかにも良さそうな情報を鵜呑みにしてしまうことがあり、それによって健康被害を被ってしまうことが多々あります。健康に従事する者は、情報の精査が肝心要です。
そのためにも、科学的根拠を大切にし、情報源はどこなのか、誰が言っていて、どの論文なのか、さらにその情報源を批評する力を培うことはとても重要です。とはいえ、一朝一夕ではなかなか身につくものではありません。そのため、誰から学ぶか、どのような習慣を身に付け、どのように行動していくかといった前提が大切です。
その上で、一人一人の健康に貢献していっていただけるとより良いサービスへとつながっていきますよ。