Kaino Yoshinori

戒能祥哲

インパクトジャパン株式会社 代表取締役社長 https://www.impactinternational.com/

略歴

高校を中退し20を超える職を転々とした後に、30歳を目前にしてフードビジネスに特化した経営コンサルティング会社にて人材開発領域に携わる。個人事業主として独立後、2010年よりインパクトジャパンに入社。2020年より現職。

現在の仕事についた経緯

フードビジネスに特化した経営コンサルティング会社で、店舗オペレーションの改善コンサルティングなどに従事していた経験があります。実地でコンサルティングを手掛けたクライアント企業の事業部長や店長に、定着のための施策を引き継いで業務を完了するものの、いくつかの店舗では数ヵ月も経つと顧客満足度や業績が低下しはじめます。
例えば、朝礼をすることは店舗において大切なコミュニケーションの一つなのですが、店長によっては中身がない形式的なものになってしまうことがあります。「店を良くしたいなら、店長を変えるか、代えるか」と言われていましたが、いくら仕組みを整えても、精緻に引き継ぎ書を作成しても、それを実行する人が変わらなければ組織カルチャーは変えられないことを痛感しました。

このような経験から、より人材開発、特にマネージャーの能力開発に注力していくようになり、研修講師として独立しました。しかし、フリーの研修講師として数年、組織のマネージャーの皆さんと関わり合う過程で、個人事業主として悠々自適に仕事をしている自分が、組織のしがらみの中で頑張っている参加者にスキル以外を伝えていくには限界があるし、不誠実ではないかと感じ始めました。改めて組織の中に身を置くことを決めたタイミングで、当時業績が低迷していたインパクトジャパンから「一緒に会社を変えていかないか」と声をかけて頂きました。

また、Impact Japanでは、LES(リーダーシップ・エコシステム®)という取り組みをGlobalに先駆けて始めました。リーダーシップ屋である我々ならではの社会課題への関わりを模索した結果、若者を支援している、あしなが育英会・カタリバ・多文化共生センターというNPO団体に売上総利益の1%を寄付し、プロボノとしてリーダーシップ開発を提供する取り組みを考案しました。少しづつスタートさせ、今年で3年目となります。人、特に若者が財産である日本の国力に、微力ながら組織・人材開発の会社だからこそできる貢献をする。僭越ながら、他の研修会社にもぜひ取り組んで欲しいと思っています。

仕事へのこだわり

「期待に応え、予想を裏切る。」を大切にしています。
17歳でさしたる理由もなく高校を中退し、20歳を超えてから通信制高校に通って卒業。その間30歳目前まで、ナイトクラブでのウェイターや日雇いの土木作業員、ピザの宅配、手打ち蕎麦店の見習いなど20種類くらいの職を転々としてきました。学歴も、誇れるような実績もないところから、フードビジネスに特化した経営コンサルティング会社に何とか潜り込めたことにより、私の人生も人格も大きく変わっていきました。

出自からして劣等感の塊ですので、「マシな人間になりたい」「誰かの役に立つ自分でいたい」という思いが人一倍強いのです。そのため、どんな案件でも、目の前のクライアントの表層的なニーズを満たすことを前提に、少しでも付加価値を加え、独自の切り口を提供することで、いい意味で相手の予想を裏切ることを心掛けてきました。
そのために、焦点化(問題点の粒度を整理し、本質的な課題が何であるのかを絞り込む)・順列設計(課題を解決するためにどのような順列で施策群を時系列展開していくのか)・吟味思考(特に内省的に用いる)の3つは今でも大切にしています。

また、期待に応え、予想を裏切ることを目指す過程で、結果として多くのインプットが必要となったため、「勉強のための勉強」ではなく実践を前提とした知識を蓄積することにつながっていると感じます。加えて、この業界では講師病(お話しは素晴らしいが、ご自身では実践していない)が散見されますが、私たちは職場で実践していない(挑戦していない)ことは提案しないようにしています。何よりも「紺屋の白袴」「医者の不養生」とならないよう、襟を正すことを心掛けています。

若者へのメッセージ

人が変わるのに遅すぎることはないですし、大きな夢や目標がなくても何の心配もいりません。小我(利己的な欲求を持つ自分)を否定する必要もないと思います。まずは、善し悪しの評価をせずに自分が心から望んでいることを見つけ、原動力とすればいいのではないでしょうか。その上で、後から小我の延長線上に大義を見出せばいいと思っています。

私の場合は、劣等感を原動力として少しずつ積み上げてきました。昔は人と比べて落ち込んだりすることもありましたが、今は去年の自分と比べて「どれくらいマシになっているだろうか」と考えるようにしています。明確な夢や目標がないという方には、劣等感を糧にして自分史上最高を更新し続けること。その過程で小我と整合できる大義を見つけるという道もあるんだ、ということを知って欲しいと思っています。

加えてもう一つ。私は外資系企業の日本法人社長でありながら、英語は全く話せません。仲間に助けてもらわないと海外スタッフとやりとりもできません。「英語ができなければ、外資では働けない」「学歴がこうだから、こういうキャリアしか描けない」「本当はこれがやりたいけれど、自分には無理」。これらの多くは思い込みです。本当にやりたいことならば、時間の遅れはあったとしても解決策はあると思います。自分の潜在能力を信じて動いてみてください。