Kimura Tadashi

木村 忠司

浜弥鰹節株式会社 代表取締役 https://www.katsuobusi.com/

現在の仕事についた経緯

弊社は1947年、祖父によって創業され、削り鰹の製造販売・だし関連商品の卸売・だしレシピの開発等に取り組んで参りました。
私は流通科学大学を卒業した後、住宅販売業に約2年間従事し、その後2015年に3代目代表に就任した次第です。
世の出汁離れに強い危機感を感じたことから、約10年間で1000回ほどの講習会を通じ、和食文化の啓蒙活動に注力してきましたが、「出汁を取る文化」の復興には至らず、考えあぐねていたところで、鰹節の香りと健康の関係性に着目し始めました。
日本人の近年の食習慣で最も大きな問題は、糖質と脂質の摂りすぎであり、この2つは「どれだけ満腹でも食べられてしまう」「理性で抑えることができない」という点からも非常に厄介とされています。そこで私が着目したのが「嗅覚」でした。
人は鼻をつまんで物を食べると、まるっきり味がしなくなってしまうように、実は嗅覚を用いて物を味わっています。
鰹節は非常に香りの強いもので、したがって出汁のきいているものは、たとえ塩分が微量でも満足感を得られるようになっているのです。
そこで「香り」という領域から食分野を含めた健康問題にアプローチできるのではないかと、大阪大学発のベンチャー企業であり、世界初の匂い解析定量化システムを持つ「株式会社香味発酵」とタッグを組み、嗅覚から生活習慣病予防へアプローチするフードテックの分野においてチャレンジを進めています。

仕事へのこだわり

私はもともと業界を超えて、たくさんの人とお会いさせて頂いたり、他社のビジネスや経営者様の考えについて伺ったりするのが大好きでした。
そのような意味でも、人のご縁というものは非常に重視しています。
弊社は現在、鰹節メーカーという枠に捉われず、嗅覚から健康分野へアプローチするチャレンジを行っていますが、これも私が出汁の「香り」を主軸としたビジネスができないかと模索していたときに、「香味発酵」様とのご縁があったことから実現したものです。
いわば私が新しいことにチャレンジしていく勇気やモチベーションも人との出会いやご縁から生まれているのではないかと思いますし、だからこそ今も先もその縁を大切にして立ち止まることなく、常に情報をブラッシュアップしていきたいと考えています。

今後の目標

「香味発酵」様との共同研究により、鰹節由来のものを使わず「出汁の香り」を開発できると踏んだ私は、エンハンス香料の開発・製造・販売を担う「株式会社リアルフレーバー」を弊社のスピンオフベンチャーとして2021年に立ち上げました。
そして、数々の試作を重ね、ようやくほぼ完成に近い「リアル鰹節フレーバー」に到達しました。
あらゆる料理シーンに活用できるような「出汁の香り」をフレーバーとして普及することで、普段の食事に塩分や糖分、カロリー、油などの余分なものを加えることなく味を底上げできると確信しています。
今後は食品メーカー様、調味料メーカー様、外食産業ひいてはペットフード産業など、健康に直結する食品産業において広く弊社の商品を活用して頂き、匂いや香りがもたらす影響力を健康促進に存分に役立てていけたらと考えています。

若者へのメッセージ

日本は今後、世界でも初と言われる少子超高齢化に突入していきます。
一説によれば、今までのルールは全く通用しないというような世界がこれからの時代と言われているのです。
現在46歳の私からこの場をもって皆さんに何かアドバイスが送れたらと思ったのですが、未知なる新世界に対しては、私も皆さんと同様のチャレンジャーです。
したがって、今確信を持って絶対こうだというようなことは申し上げられませんが、ただ、今も先も人とのご縁が大切なことは変わらないと思います。
だからこそ皆さんもご自身のご縁を大切にした上で、何ができるのかを追及し、周囲の人々と手を取り合って頑張って頂けたらと思います。