Matsumoto Satoru

松本 哲

アリタポーセリンラボ株式会社 代表取締役社長 / 七代目弥左エ門 https://aritaporcelainlab.com/

略歴

九州大学経済学部卒業後、某都市銀行に入行。3年間勤めるが実家に呼び戻され、20億円の借金を整理するために民事再生を行い、家業を継ぐことになる。
有田焼を今一度世界ブランドにするために、現代のライフスタイルに合ったモダンな有田焼「アリタポーセリンラボ」の開発を手がける。その中でも、日本の四季をテーマにした新しいスタイルの有田焼「JAPAN」シリーズは、NY、パリ、東京で高い評価を得ている。

現在の仕事についた経緯

1804年に初代弥左エ門が弥左ヱ門窯を開きましたが、二代目で倒産。強運にもギャンブルに勝ち、家屋敷を取り戻すことに成功しましたが早死にしてしまいます。三代目は西登窯の総支配人となり三代目弥左エ門を襲名。地域産業の発展のため共益株式会社という銀行を設立して財を成し、四代目は海外輸出の夢を追って有田焼を持ってヨーロッパへ向かうも、南アフリカで資金が尽きてクリーニング屋を始め、日露戦争を機に帰国。五代目は「ゴールドイマリ」というブランド名で北米や欧州向けに輸出し、最盛期には売上高が30億円、従業員は700名前後になりました。ところが六代目で円高の影響により輸出が縮小、バブル崩壊後、赤字がどんどん膨らんでしまいました。私はその当時銀行員でしたが、実家に呼び戻されバブル崩壊で出来た20億円の借金を整理するため、民事再生後、七代目弥左エ門を襲名しました。

仕事へのこだわり

民事再生に至った原因を考えた時に、①伝統的な有田焼のデザインが現在の住環境にあってない事、②地元の問屋に定価の25%~30%で卸す以外の流通が認められない産地の問題があった事だと考えました。
そこで、現代のライフスタイルに合った有田焼をコンセプトに「アリタポーセリンラボ」というブランドを立ち上げ、このブランドの商品は産地の問屋に卸さず独自の流通を目指す事にしました。
デザインは、今までの有田焼の艶やかな透き通るような白磁、色鮮やかな色彩は、日本家屋に一番合ったデザインですが、住環境が大きく変わった現在のモダン化している空間では、色彩が合ってないのではと考え、その色彩を変える事で、有田焼の伝統的絵柄を現代の空間に合うようリデザインしました。
その中でも、ニューヨークの展示会に出展したJAPANシリーズは国内外で高い評価を得て、伊勢丹新宿店、日本橋・銀座三越等の国内高級百貨店や、フランスの三ツ星レストラン「ル・グラン・ヴェフール」や、マンダリンオリエンタル・パリ等の星付きのホテルでも使われる事になりました。
そして、有田焼400周年事業の一環でフランスで開催された「メゾン・ド・オブジェ」に初参加しました。それ以降、フランスの香水・化粧品メーカー「ゲラン」とのコラボで有田焼の香水瓶デザインしたり、有名洋菓子店「ラデュレ」と紅茶と有田焼のコラボを行ったりしています。
今後も有田焼の400年の伝統の技を継承しながら、新しいデザインを生み出して、日本のラグジユアリーを世界に拡げて行きたいと思います。

若者へのメッセージ

日本には、有田焼をはじめ数多くの伝統産業があります。歴史も長く、熟練の職人が手作業で作っていますが、時代に取り残され廃業寸前まで追い込まれているところが多いのも事実です。
一方、馬具工房だったエルメスや、旅行用のトランク製造のルイ・ヴィトン等のヨーロッパの伝統産業は進化し、ラグジュアリーブランドとして世界中の人達に愛されています。日本の伝統産業も同じかもっと古い歴史があり、職人の技術も引けを取りません。
若い人たちにもっと日本の伝統産業に興味を持っていただき、日本の将来のためにも、力を貸していただく事を望みます。