Nishigawa Takeshi

西側 赳史

株式会社Encounter Japan 代表取締役社長 https://encounter-japan.com/

略歴

関西学院大学を卒業後、総合商社での勤務を経て2014年に独立し渡墨。株式会社Encounter Japanを創業し、代表取締役に就任。現在はメキシコ国内で日本食レストランを複数店舗経営し、また広告代理店事業を通じてCM制作やグラフィック・デザイン等を手掛ける他、日本政府観光局のメキシコにおけるPRやプロモーションを担う。
『現代メキシコを知るための70章」/ 明石出版での執筆や、自治体や大学での講演活動、2021年度 高等専門学校デザインコンペティションの審査委員、中小企業基盤整備機構2022年度中小企業アドバイザー(新市場開拓)を務める。

現在の仕事についた経緯

経営者だった祖父の姿をみて、幼い頃から会社経営に憧れを持っていました。また学生時代、貧乏旅行で世界中を1年半ほど放浪した中で、ラテンアメリカに魅了された私は「将来はラテンアメリカで会社経営をしよう」と決意しました。

また旅中、資金の限られた日々を過ごす中で「現地でお金を稼ごう」と思った私は、モロッコで輪投げ屋をしたり、アルゼンチンで靴を路上販売したり、コロンビアで寿司を売ったりしてみました。言葉も通じない、技術も知恵もない自分が異国の地で「1円を稼ぐ」ことの難しさと楽しさを経験できたことも、海外で起業した原体験の一つですね。

仕事へのこだわり

新卒で入社した双日株式会社で、当時の先輩方から学んだことが、いまの自分の土台となっています。

いまでも当社のバリューの一つとして大切にしている「Business is Love」ですが、このフレーズは私が新入社員当時の指導員であった先輩に教えて頂いたものです。「お客様にとって、あなたが新入社員であったとしても、頼れる相手はこの会社の中でお前しかいない。そういった相手方に対する心構えとして“愛情”を持って接することが仕事において非常に重要だ。これすなわち“Business is Love”だからね」と教わりました。

当時の私は「仕事」を「労働」としか捉えることが出来ておらず、目の前の仕事の先にいる「人」や生み出す「価値」を想像できない、いまよりも未熟な存在でした。愛情を持って仕事や顧客と向き合うからこそ、その先にある価値や信頼、人間関係が生まれ、それを繰り返していくことで仕事の楽しさや、やり甲斐に気づくことが出来ましたね。

現在は70名のメキシコ人と10名の日本人がEncounter Japanで勤務してくれていますが、国民性の違いに伴う、異なる価値観や考え方に対して「違い」から目を背けず、それを受け入れて、どうやって多国籍のチームが共に働く意味や価値を高めていくことができるかについて、常に悩み、考えながら仕事に取り組んでいます。お互いが時に主張し、会話の中で受け入れていく。言語の壁もあるので、決して簡単では無いのですが、違う国で生まれ育ったお互いが、共に知恵を絞って仕事に取り組む先に、きっと他社では簡単に実現できない価値があると信じています。

あとは社員の皆が日々、それぞれの持ち場で真摯に仕事に取り組んでくれている中で、皆の仕事がどのように「社会に貢献している」のかを実感してもらうために、社内のメンバーとの対話や情報発信に取り組んでいます。今後はより一層、社内の幹部や人事を通じて取り組んでいきたいテーマですね。

若者へのメッセージ

基本的には若い方々から相談を受けると、「やった方がいいんじゃない」と答えるようにしています。やりたいことに対して、「死なない程度に」精一杯取り組む過程の中で、沢山の出会いや知恵、成功体験そして失敗体験に恵まれると思うので、取り敢えずやってみる。行きたい場所に行ってみる。若い方々の「挑戦したいこと」やその想いは、とても尊いので、その気持ちを大事にしてほしいです。

海外で起業したい方々に対してのアドバイスでいうと「長期戦を覚悟する」ことは大切にした方が良いと思います。商売が軌道に乗るまでのリードタイムだけでなく、現地の文化や習慣に対しての理解、現地に住む方々との人間関係の構築などにも時間を要します。3年間などのスパンではなく、挑戦するなら少なくとも5年、出来れば10年に渡って、その国で自分の人生を費やしてみようという心構えが必要だと、自身の経験をもって感じます。

あと、大事なこと。大人になってから仕事を通じて発生する、利害関係の生じる人間関係も素敵なもので、かつ大切なものです。一方で、若い頃に出会える友達は、一生の財産だと思います。若い頃にはコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスは極力考えず、友人や恋人との時間を愉しむことが出来れば、それはきっとかけがえのない思い出、そして人生における財産になるのではないでしょうか。