Saruhashi Hiroyuki

申橋 弘之

株式会社金谷ホテルベーカリー 代表取締役社長 http://www.kanayahotelbakery.co.jp/

現在の仕事についた経緯

金谷ホテルベーカリー(以降KHB)は、1873(明治6)年に、私の祖父金谷善一郎によって創業された「金谷ホテル(以降KH)」の兄弟会社です。
当社は1949(昭和24)年に「日光物産工業株式会社」の名称で設立され、当初は輸出向けサラダボール等の木工製品の製作販売をしていました。1970(昭和45)年に、KHの製菓・製パン部門が移管されたことで、食品の製造販売に業態転換しました。
私は電気会社に勤めていましたが、父昇(金谷善一郎の四男で申橋家に養子入った)がKHにいたこともあり、KHとKHBの非常勤役員として30年以上務めました。定年前にKHBに入社し、代表取締役に就任し、20年になります。現在「金谷ホテル歴史館」(KH発祥の地)・「社会福祉法人むくどり」(東京都板橋区)の業務にも携わっています。詳細はHPをご覧ください。

♦参考♦
金谷ホテル歴史館:https://nikko-kanaya-history.jp
金谷ホテルベーカリー:https://www.kanayahotelbakery.co.jp
社会福祉法人むくどり:http://www.mukudori.jp

仕事へのこだわり

KHは来年2023(令和5)年6月に創業150周年を迎えます。食品製造部門でも100年以上の歴史を持ちます。
製パンであれば、小麦粉の美味しさをどうやって生かしていくかということに、こだわりを持っています。当初から添加物等を極力抑え、いつ食べても美味しい、飽きの来ない味を追求してきました。最も重視しているのは、そういった歴史や伝統、ブランドを大切にしながら新しい時代に合わせて提供していくことにあります。
以上のことを日々実現していくための私の基本的な考え方は、「涙のうちに種まくものは喜びのうちに刈り取る」という言葉に集約されます。これは旧約聖書の詩篇詩篇126篇(フランシスコ会聖書)にあるユダヤ人のバビロン捕囚の歴史的背景にした言葉です。商売としてのは「先義後利」です。まずこちらから誠意を尽くしてお客様に喜んで頂き、利益はその後からついてくるものだということです。一方、ステークホルダーに支えられながら、会社は社員が幸せになることが第一で、社員をどのように幸せな気持ちにできるかというのも重要な点だと捉えています。

今後の目標

KH創業150周年記念事業として、まず2022年年末に「金谷ホテル物語」を出版します。以降来年6月に向けて、金谷家は江戸時代初めより東照宮の笙の奏者であったことから笙を中心としたイベントを開催します。また記念商品の開発販売、お世話になった皆様への感謝会を開催予定です。

今後の目標としてしては次の通りです。
☆時代に合った商品の開発販売、販路拡大が必要です。現在、代表的な商品として「ロイヤルブレッド」「チーズロード」「抹茶大納言」の3種類のパンがあり、それぞれ数10年~100年の歴史を持つベストセラーとなっていますが、是非ともこちらに続く新しい商品ラインナップを生み出していきたいと考えています。今年6月に栃木県内にコストコ壬生店が開店しました。商品として、コストコ向けにクッキー、パンケーキ、マーガリンを開発し販売開始しました。このようなご縁も活用しながら徐々に商品開発を広げられたらと思います。
☆若い方々へは、SNSなどのWebも活用しながら販売経路の拡大も進めていきたいと考えています。
☆工場の老朽化にともない、新しい土地での新工場の建設を計画しています。

若者へのメッセージ

私は今年で80歳になりました。よき知人友人、生活環境に恵まれ、今日をむかえています。60年程前私が20歳代の頃を思い出して、現在の私の考えていることを、皆様に申し上げます。
現在、生活面では便利になりましたが、情報が氾濫し、世界が刻一刻と変化し、何が真実か、何が大切なのか判断しにくい時代となりました。先達の知恵を借り、周囲の人に助けてもらいながら、普遍的な正しさ、本質を見極める術を身に付け、判断していくことがより一層重要になると考えています。私は歴史書、聖書をよく読みます。歴史的に見て、表面的には時代により変化があると思いますが、人間が大切にしてきたものは、代々引き継がれてきていると思っています。
ここでは「人に尽くすこと」に絞って申し上げます。人は生き方に悩みながらも、他人と互いに助け合って生きています。心の底にひとの役に立ちたい、人に尽くしたいという気持ちをもっているものです。この人の役に立ちたい人に尽くしたいとういう心が大切なことだと考えています。先述の「涙のうちに種まく者は喜びのうちに刈り取る」という言葉に集約されます。
私なりに考えると次のようになります。
人にとって「種をまく」とは人生の大変な課題です。人との関係で、どのような種を、誰のために、どこに、何のために蒔くのか。なぜ苦労してまで種をまくのか。大きな苦しみ葛藤、悩みがあります。そして人は、努力し収穫のために生涯働き続けます。収穫は苦労が大きいほど喜びも大きなものでしょう。一方自分が刈り取れるかというと、そうではない場合もあります。他人が刈り取る場合もあります。そして人はいかなる結果になろうと、最後は、皆同じように天に召されます。皆さんにこのような滋味深い言葉を通じて、自分の人生を今一度じっくりと考えて頂きたいと思います。      
自分の人生が充実し、生まれてきてよかったと思えるよう、ぜひ根気強く、忍耐強く人生を歩んでいってください。