Yahagi Masao

矢作 昌生

矢作昌生建築設計事務所 設計事務所代表、大学教授 https://www.myahagi.com/

略歴

プロ野球選手を目指して日大二高に入学するも夢破れ、日本大学理工学部海洋建築学科に入学し卒業(1989年)。設計組織ADH勤務を経て、LAにある南カルフォルニア建築大学(SCI-Arc)大学院修了。在学中にNail M. Denari Architectsにパートタイムとして勤務。1997年、矢作昌生建築設計事務所設立。西日本工業大学、日本大学、九州工業大学などで非常勤講師、東亜大学(韓国)客員教授を経て、現在は九州産業大学教授。建築家と大学教授の二足の草鞋。グッドデザイン賞(14回受賞)など受賞歴多数。仕事のご依頼は全国から。

現在の仕事についた経緯

大学2年生が終わった春休みに大学が企画したヨーロッパ建築ツアーに参加して、アントニオ・ガウディが設計したサクラダファミリアを見て感銘を受けました。本人が亡くなっているというのに、意思を受け継いだ人達が100年以上も工事を続け、私のような東洋からきた若造の心を動かす「建築」は時空を超えるような仕事だと思い、一生の職としました。

仕事へのこだわり

建築というのはとても長い時間軸の中で考えるものです。住宅の設計だと、日々の子育てや家事をいかに楽にするかということが求められますが、「便利なこと=幸せ」ではありません。
機能面はもちろん解決した上で、10年後、30年後、50年後、100年後も価値があるものを作りたいと考えています。私も子育ての真っ只中ですが、自分で設計し6年前に完成した自宅兼事務所では、遠くの山を切り取った窓の景色、川の音を聴きながら夜にワインを飲むバルコニーなどで、日々の生活を楽しんでいます。
建築も歳をとり、人間も歳をとりますが、歳を重ねるごとに良くなる建築や人でありたいと常々思っています。出江寛という大先輩の建築家が「古美る(ふるびる)」という造語をよく口にしていましたが、素晴らしい言葉だと思います。
事務所を設立して25年を超え、これまでに住宅を中心に150件くらいの設計に携わりました。家族の事情でどうしても家を手放さなければいけなくなり、売却したところ購入した時以上の価格で売れた家が数件あります。正に古美(ふるび)て価値が上がった事例です。
お医者さんの家庭で育った息子さんが、私が設計した家で育ち、建築家を目指したケースもありました。20年後のメンテナンスで伺ったお宅で、当時、幼稚園児だった娘さんが、家ができた日に私とキャッチボールをしたことを覚えてくれていて感動しました。
20歳の頃に目指した建築は、まさに時を超えて人の幸せに関わる仕事だと痛感しています。

若者へのメッセージ

大学教員もしているので若者と接する機会は多いのですが、彼らにはとてもシンプルな話をしています。1日は誰でも24時間、単純に3分割すると、8時間寝て、8時間働いて、8時間はプライベートな時間。休暇などは別として、寝る時間を省くと人生の半分は「仕事」ということになります。
昨今は仕事は仕事と割り切って、プライベートを重要視する傾向にありますが、「仕事」がつまらないと人生の半分はつまらなくなります。仕事も「楽しい・やりがいがある」方に加えてあげると、人生の全てが楽しくなる可能性があります。もちろん、仕事ですから、大変なことも沢山ありますが、結果的に楽しいと思える仕事を選ぶ方が良いと思います。
私の仕事は、仲の良い家族が家を建てること、ビジネスに成功して店舗・事務所・クリニックを建てること、つまり人の幸せをお手伝いする仕事なので、「幸せ産業」と命名していて、私自身も幸せになります。みなさんも自分が幸せになる仕事をみつけられてはいかがでしょうか。