Yamamoto Miyuki

山元 美由紀

de nuance 代表 https://de-nuance.jp/

略歴

地方公務員として勤務後、高校時代から抱いていた西洋の歴史と考古学への夢を諦めきれずイタリアに渡航。フィレンツェ大学文学部考古学科を卒業。3年間に渡り夏と冬の時期に南イタリアの発掘作業に参加。その後、イタリアで翻訳・通訳業を営み、官公庁、法務、ビジネス、産業、工業、M&Aなど幅広い分野で活躍する。近年はコンサルティング業務も手掛け、日本及びヨーロッパ企業の市場参入・拡大サポートを提供し、数多くの実績を挙げる。
2022年2月にde nuance(ドゥ・ニュアンス)を設立し、現在は20年以上のキャリアを誇るスタッフを揃え、多岐にわたる翻訳・通訳・海外コンサルティングサービスを提供する。

現在の仕事についた経緯

フィレンツェ大学卒業後、唯一自負できるスキルが語学力だと認識しつつある頃、ミラノとフィレンツェで開催された日本映画祭にて通訳・翻訳のアルバイトをしました。その時、「訳す」という一見単純に捉えられる世界の複雑性と奥行きに魅了され、翻訳家になることを決意。多種多様な場面において通訳・翻訳の経験を重ねていく中、訳者の力量やセンスにより人や物事が左右されるのはもちろん、文化、風習、思想の違いを熟知していなければ表現できないことがあると実感しました。
現地で実際に生活することも大きな利点にはなりますが、事前準備ほど重要なものはありません。自身にとってそのオタク的要素も含む地味な作業が心地よく、通訳・翻訳の瞬間に話し手の代わりとなり言葉を伝える黒子的な存在でいることに喜びを感じるようになりました。
話し手の伝えたいニュアンスを、そのバックグラウンドも含めたうえで的確に捉えて最良の言葉で伝える、このプロセスが真のサポートだと確信し、de nuance(ドゥ・ニュアンス)創業を決意しました。

仕事へのこだわり

最も大切にしていることは自分らしさを失わないということです。自分らしさとは、①顧客の満足度を追求、②絶対に前面に出ない、③利ではなく信を優先、④目の前にいる人を好きになる、⑤無理はしない、ということです。

①顧客の満足度を追求するとは、お客様が満足することで初めて自己の満足度が満たされるという構図が基礎となっています。自己のパフォーマンスに対する評価は自身ではなく、そのサービスを受けたお客様の評価によるものです。極端ではありますが、自身では失敗だったと思う内容も顧客が大満足していれば成功です。

②絶対に前面に出ない、とは元々の性格もありますが通訳・翻訳業は「まるでいないかのような」存在と捉えられることが醍醐味です。お客様に「その言葉選び、まさにこの人っぽい」などと言われた日には、翻訳家冥利に尽きます。通訳・翻訳・海外コンサルタントとして、あくまで補助的役割でその場にいることを常に念頭に置く必要があります。経験上、言葉を通じて橋渡しをする立場の人間が前面に出ていいことは一度もありません。

③利ではなく信を優先、とは人と人とのつながりを大切に築かれてきた信頼関係を重視した業務を心掛けることです。利のみの関係ほど生きていることへの悲しさに結びつくものはないと考えています。

④目の前にいる人を好きになる、とは仕事だけでなく生活の中でも実践していますが、この言葉を常に意識するだけで何事もポジティブに捉えられ、ある意味私にとっておまじないのような言葉です。

⑤無理はしない、とは自身のその瞬間の最善は尽くしながらも限界を認識し正直に生きるという意味合であり、この姿勢が顧客、仕事、自分自身に対してのリスペクトだと考えています。

若者へのメッセージ

20年前、公務員を退職しイタリア渡航を決めた時、私を象徴する言葉だと親友からプレゼントされたダーウィンの言葉「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」。 そして、いつの時代も不変であり、人間ゆえの姿といえる一つが「謙虚さ」だと考えています。
過度な自己主張が評価される世の中で、この「謙虚さ」は自己にとって稀有な強みとなるかもしれません。自身の幸せとは何かを追求し続けることが大切です。全ての経験に意味があると信じ、生きるためのバランス感覚を養ってほしいと願います。