Yamoto Yoichi

矢本 洋一

株式会社ROSECC 代表取締役 https://www.rosecc.jp/

現在の仕事についた経緯

大学を中退後、コック見習いをしていたのですが、飲食業界は人の出入りが激しく、生涯の生業には向いていないと感じていました。
そこで違う世界も見てみようと、さまざまな業界を覗く中で、友人から「うちの取引先にロボットを取り扱う会社があるから働いてみたら」と声を掛けられ、1990年にROSECCへ入社しました。
創業者である先代社長と30年近く共に歩む中で、社長交代への打診があったのですが、当初はとんでもないと断り続けていました。
しかし私の合意を待たずして、取締役会および株主総会で、代表交代を宣言してしまい、それも異論がなかったことから、2017年に図らずも社長を拝命したという経緯です。

仕事へのこだわり

創業社長は比較的攻撃的な立ち位置でしたが、私は守る立ち位置で今日まで来ました。
たとえば、創業社長が新規の顧客を獲得したとしたら、私はそのお客様とお付き合いを重ねながら関係性を維持していくという風に、二人三脚の関係性でやってきたのです。
しかし創業社長が退任されたことで、私は約30年間、一体何をやってきたのだろうと振り返るタイミングがありました。
そこで私がやってきた仕事とは、ときには損をしても、一定の関係性を維持していくための“親切”を施すことだったのだろうという結論に至りました。
そこで現在は、損得にこだわらず“親切”を施し、その“親切”をお金に換えられるところまで持っていくことを弊社の1つの軸にしようと取り組んでいるところです。
まだまだ経営者としては暗中模索の日々ですが、1つ確信しているのは、いくら先のことを読んでもどうしようもないということで、ひいては、目の前のことを一生懸命にやっていくしかないということです。
ただ、創業社長が言っていた「社長の仕事は明日の飯を作ることだ」の言葉通り、社員の生活を意識しながら取り組んでいくことは、経営者の責務であると心に留めています。

今後の目標

弊社では、産業用ロボットを中心とした自動化の設備を提供していますが、従来は「切る」「削る」「運ぶ」の3つの工程に特化していたところへ、次は「塗る」という新たなアクションを加えようと現在取り組んでいます。
また、会社として“エンジニアリング”を大々的に謳ってはいるものの、それはロボットの設備を考案したり、スペックを作り上げたりする役割という意味であり、実際は自社工場を持たず、ものづくりも行わず今日まで来たというある種のジレンマがありました。
しかしせっかく社長という役割を拝命した限りは、小規模でもある程度の設備を整え、“エンジニアリング”の名目に恥じないものづくりを行いながら、会社としての深みを増していければと考えています。
そして、大体5年間で軌道に乗せ、弾みがついた段階で次の代に継承したいというのが現段階でのビジョンです。

若者へのメッセージ

弊社の親会社の社長は、灘高校、東京大学、科学技術庁と、エリート街道を歩んできた人物ですが、昨今のワークライフバランスの話題になると「私は国会が始まったら家に帰った試しがない」と激昂されます。
私も、1月3日に仕事始めをしたら、次の休日が6月だったということが当然のようにありました。
つまり、私達の時代は、ライフワークバランスに縁がなかったということです。
ただ先日、林修先生が「量が質を生む」とおっしゃっていたのを聞いて深く共感すると共に、ワークライフバランスが尊重される昨今、今の若い方は量を担保するのが難しい時代に生きているのかもしれないと感じました。
すると、皆さんにおいては、自発的に取り組み、より多くの場数を踏む努力をすることが重要となるのかもしれません。私からのアドバイスとしては、とにかく目の前のことに集中して臨み、やりきることです。その繰り返しで、必ず積みあがっていくものがあると思います。